ベイマックスおもしろかった

☆☆☆

後ろにマジンガーZ(グレートマジンガー?)の絵があって、おおって思った。

もちろんロケットパンチの元祖であり、
パイロット搭乗ロボットの元祖である。

主人公ヒロの部屋と友達の金持ちの部屋、他にもいろいろ背景にキャラがいて、きっと探せば探すほど面白いんだろうなあ。

舞台がアメリカと日本の混ざったような架空の都市であり、
建築の観点からも非常にマニアックらしい。
オタクのコツコツとした没頭が新しい技術と素晴らしい未来を生むという思想。
日本リスペクトではあるけど、実際は海外の大学の方がそういう文化育ってるんじゃないかな。
原作は全員日本人だけど、多民族の大学生チームというのは
アメリカの大学っぽくもあるし、逆に異種の融和というのが日本的でもあると思う。
多民族というのは個人的に強調したいポイント。

アメコミヒーローぽさと、日本の古くからのロボットものとヒーローものとゆるキャラ的可愛さの遺伝子を引き継いでいる。
それらの遺伝子の気になるものの初出年度を調べてみた。

鉄腕アトム 1952年
鉄人28号 1956年
スパイダーマン 1963年
サイボーグ009 1964年
マジンガーZ 1972年
スターウォーズ 1977年

ずんぐりとしたロボットのデザインは今ではメジャーではなく、ガンダムエヴァ・直近ではクロスアンジュなどスリムな方が普通だけど、鉄人28号マジンガーから楽園追放に至るまでずんぐりも連綿と引き継がれているのかも知れない。
そのずんぐりデザインのもう一つの本流であるマスコットキャラクターとしての可愛さをかけ合わせて、アクションと癒やしの両方を受け持つキャラクターは商品として汎用性高いと思う。
よく見るとノーマルは三角形、アーマードは逆三角形でシルエットが違うのか。
歩いてるぴょこぴょこも日本のセンスを参考にしたとか。
(日本だとアクションとエロをかけ合わせるけど、外国はエロ表現できない。)

見る前に28号やドラえもんのモニュメントをベイマックスって言ってふざけてツイッターで投稿してたけど、
実はルーツとして間違ってなかったのである。

BIG6って言っても戦力は5人分。
大学生たち4人はそれぞれの科学能力を持ったアメコミヒーローだけど、ヒロは特に能力なくて、ベイマックスに乗るだけ。
つまりベイマックスはあくまでパイロット搭乗ロボットなんだな。翼とロケットパンチマジンガーで、自律したAIがちょっとチェインバーっぽい。
足裏からのジェットはアトムと002のリスペクト。

物語の細かい課題に対しては間を開けることなくサクサク解決していてすぐ次に進んでいる。      

ロボットファイトでやさぐれ
→進学を決意
研究がうまくいかん
→マイクロボット開発
仮面に対向する必要
→武器開発
復讐心で闇落ち
→兄の記録で復活
教授の復讐
→阻止
教授の娘発見
→救出

大きな課題はヒロが兄の死を乗り越えることでであるが、
これも、長期ではあるが段階的にテンポよく進んでいくので気楽である。
ベイマックス初登場で外を歩く気力を取り戻し、
仮面と戦うために能動的な意欲を取り戻し、
大学生たちとスーツを作ってベイマックスで空を飛びまくったことで、
より以上の健康を獲得してその後もいろいろあるけど、ラストのロケットパンチまでサクサクしている。

あの経営者も積極的な放火魔から目先の手柄に釣られて失敗しただけの小悪党としてグレードダウンだし
全体的に軽くて明るい話。

中盤で憎しみに捕らわれたヒロとベイマックスが帰還して、
ベイマックスの記録の中から「ヒロシは生きている」を納得するあたりが一番の話の頂点で、
その構造をそっくりそのままその直後に教授に当てはまるのも、わかりやすくて伝わりやすい。

憎しみにとらわれない、健康が大事、悲しみは克服できる、など本当はもっと重いテーマだけど、大衆娯楽なので軽く描き、なおかつ説得力を落とさないように上手に構成したいい感じの作りだったと思う。

009みたいだなーと思った。まあおれが009フリークなだけなんだけど。
個性的な能力をチームワークで活用して戦う多民族混成チーム。
まあチームワークっていうのは形式上で実際はほとんど主人公頼みだけど。

009は悪の科学から生まれた戦士たちが例外的に正義に目覚めるけれど、最終的には悪から生まれて悪を育てるのだと言う救いのない話。

ベイマックスは未来を明るくするための科学を暴力のために使う人が現れるけど、最後は人を助けるための力に回帰するという逆の構造。

戦後の日本には科学万能神話とそのアンチテーゼがあって、アトムも009もその文脈に絡んでたと思うけど、
ベイマックスでこういう描き方なのは、ライト娯楽ってだけでなく、
科学が人類を幸せにするという物語は2014年においては復権しつつあることの反映だと思う。